世子様に見初められて~十年越しの恋慕
「そなたの淹れる茶が飲みたい」
「……はい」
ヘスの視線が注がれる中、緊張しながらも丁寧にお茶を淹れる。
ヘスは暗号の書かれた書簡と解読したものが書かれている紙へと視線を移した。
「なるほど」
時折、茶を口に含みながら、地図のような紙にも釘付けになる。
「何かお分かりになりますか?」
ソウォンも紙に視線を落とし、色んな角度から眺め、思い当たる事を横で書き留め始めた。
「王宮の地図だろうな」
「やはり、そうなのですね」
「この中央の『雲』の文字が分からぬが、位置からすると、建物は勤政殿(クンチョンジョン:正殿)であろうな」
王宮のほぼ中央に位置しており、勤政殿以外に考えられない。
「これは個人的な見解なのですが、『雲』は亡くなられた公主の事を指しているのでは?」
「叔母上?」
「はい。幼名、もしくは許嫁であった戸判様との間で呼ぶ名前とか。暗号に隠すなら本名は書かないかと」
「それもそうだな」
「それと、隠すなら見つからない場所に隠すのが当たり前なので、勤政殿なら納得が行きます」
ソウォンは空になったヘスの器に茶を注ぐ。
ヘスは考え得る隠し場所を次々と紙に書き出していると、視界の片隅で欠伸をするソウォンに気付く。
「すまぬ、もう遅い時間だな」
「あ、いえ、大丈夫です」
「無理するな。私もそろそろ休まねば」
「……はい」
ヘスは隠し部屋の戸を開け、執務室に待機しているヒョクに声をかける。
すると、既に用意されていたようで、隠し部屋の中に寝具が運び込まれた。
※ ※※
「あの、……世子様?」
「ん?」
「………」
ソウォンの目の前に敷かれた布団は二人分。
寄り添うように並べられている。
しかも、ヘスは平然と衣を脱ぎ始めた。