冷徹ドクター 秘密の独占愛



昼休みが近付く午後十二時過ぎ。

来院の患者さんもひと段落して、今は谷口さんがスケーリングの患者さんを一人診ている。

午前中に診た患者さんのカルテの記載を終え、受付けでアポ帳を覗き込んだ。


「あと二人か…….あれ? 津田さんって、私の担当になったの?」

「あ、はい。前回の帰りに浅木さん担当にしてくれって言われて」

「そうなんだ……」


この後、十二時半から予約のTBI(ティービーアイ)の津田敏明(つだとしあき)さん。

この間、P急発で来院した、あの歯石びっしりだった患者さんだ。

三十九歳というまだ若い成人男性にしては珍しいくらい口腔内が荒れていた。

その口の中とリンクして、外見の印象も清潔感があるとは言えず、髪はボサボサで服装もだらしなかった。

平日の昼間に歯医者の予約を取って来るなんて、仕事はしていないのかと疑問に思う。

カルテに記録してある保険証は国保だけど、もしかしてニートとかだったりするのだろうか。

< 126 / 278 >

この作品をシェア

pagetop