冷徹ドクター 秘密の独占愛


「お願いします」


手にあるカルテを律己先生に差し出しながら、その背後の女性に目を奪われてしまう。

近くで見ると、二重の大きな瞳が印象的で、華やかな顔立ちをしているのがよくわかる。

毛先をランダムにカールした長い黒髪は一つに緩く束ね、耳元には花を象ったビジューのピアスが輝いていた。


「浅木さん、下村さん」


二人の後を追って出てきたのか、院長も医局からやってくる。

ニコニコ笑顔の上機嫌な様子で、その場にいた私と下村さんを手招きで呼び寄せた。


「先に紹介しておくから。こちら、田島芽依(たじまめい)先生。今週から週に何回かうちの手伝いに来てくれることになったから」


どうやら学生ではなくドクターらしい。

院長に紹介された田島先生は、私たちに向かって「よろしくお願いします」と会釈する。

つられるようにして頭を下げた。


「律己先生の同期の先生なんでね、うちでの診療は全般お願いできるから、予約もそのつもりで入れていいからよろしくね。あ、あと、」

「津田さん、入れて」


まだ続きそうな院長の話を、律己先生はタイミングも頃合いも無視して躊躇なく遮る。

足早にグローブを取りに行く姿に、慌てて「はい!」と返事をした。


患者さんを通し、律己先生と私が診療を始めた後も、院長は田島先生の紹介を中田さんや森さん、谷口さんに続けていた。

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