冷徹ドクター 秘密の独占愛
染め出しをしてうがいをしてもらった口腔内は、見事にブラッシング指導のやりがいがある染まり具合だった。
チェアを起こして手鏡を持ってもらい、用意しておいた歯ブラシを手渡す。
「では、普段通りに磨いてもらってもいいですか?」
「あ、はい……」
受け取った歯ブラシをグーで握り、ガシガシと腕ごと振るような豪快な歯磨きを披露される。
「普段、何分間くらい磨かれますか?」
「……二、三分くらい、ですかね」
「そうなんですね。口の中を綺麗に磨くには、最低十分は磨かないと綺麗にならないと言われていまして、まず持ち方なんですけど」
歯ブラシを握る手からブラシを抜き取り、持ち方を執筆状把持に持ち替えさせる。
「歯ブラシはペングリップで持ってもらって、動かし方は横に細かく動かします。ちょっと一緒にやってみましょうか」
鏡を見てもらいながら手を添え、ストロークの確認をしていく。
そんな指導の真っ最中、後方から楽しげな笑い声が聞こえてきて、思わず振り向いてしまう。
目に飛び込んできたのは、背の小さい田島先生が、律己先生を見上げて笑顔を向けている姿だった。