冷徹ドクター 秘密の独占愛
雨上がりの帰り道。
診療が終わる前に止んだゲリラ豪雨は、街灯に照らされるアスファルトの道をキラキラと光らせている。
昼間照り付けていた太陽の熱を冷ました雨は、地面からじとりとした蒸し暑さと、雨の匂いを辺りに充満させていた。
誰もいない夜道に自分の足音だけが響く。
何度も背後を振り返りながら、見えて来た自宅建物にホッと息を漏らした。
鍵を取り出しながらドアを目指す。
カコッと開錠する音と共にドアノブを引き開けた時、背後から抱き付かれるような形で部屋の中に押し込まれた。
咄嗟に出た悲鳴に似た声は、強く圧迫された手の平に閉じ込められる。
引き剥がそうと上げかけた手は無惨にも掴み取られ、抱き締めるような状態で身動きを封じられていた。
「お帰り……待ってたよ」
自分の乱れる呼吸とは別に、耳元で囁かれる妖しい声。
もがくように渾身の力を込めて振り解こうとしても、拘束された体は自由にはならない。
やめて、離して!
叫んでいるはずの必死の訴えは全て押さえ付けられた手の中に消え、自分の無駄な抵抗に涙が込み上げてくる。
「い、や……」
「おい」
「助け、て……やめ、て……」
「浅木!」