冷徹ドクター 秘密の独占愛


「……大丈夫か」


耳元で聞こえた声は、悪夢を見た私を気遣う、心配したような声だった。

瞬きを忘れるほど衝撃を受けたけど、これは私を落ち着かせるための行為と必死に言い聞かせる。

それでも、密着した体から伝わる体温に全身が熱を上げていく。

目の前にあるネクタイのストライプ柄をじっと見つめながら、触れる胸板から伝わる律己先生の心音を聞いていた。

爽やかな、何かいい香りがする。
この距離じゃないと気付かない、微かな香水の香り。


「あんなことがあったら……やっぱり見過ごせない」


抱き締める腕を緩めて両肩をしっかり掴むと、真っ正面から顔を見つめられる。

その真剣な瞳に、戸惑う自分の顔が映っていた。


「あの……大丈夫、です。私は、大丈夫ですから」

「俺が大丈夫じゃない」


食い気味に返ってきた言葉に、それは一体どういう意味なのか困惑した。

でも、思いを巡らせるより前にまた律己先生の腕の中に抱きすくめられてしまう。

後頭部を抱いた手に意味深に力がこもった。

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