冷徹ドクター 秘密の独占愛
今度こそ頭の中が真っ白になるほどのパニックに陥っていた。
言われた言葉の意味も、この状況だって訳がわからない。
ただ、自分の鼓動だけが大きく音を立てていく。
静寂に包まれた広い部屋に、律己先生の静かなため息が落ちた。
「仕事をすることが……嫌になったか」
「え……?」
「今回のことで……患者を診ることが怖くなったんじゃないのか?」
静かな問い掛けに、今見た夢がぼんやりと浮かんでくる。
確かに、病院には様々な人が来る。
ただ普通に、いつも通りに仕事をしていただけなのに、今回のことで少なからず怖い思いをしたのは確かだ。
今さっき大丈夫と言ったばかりだった。
だけど、本心は大丈夫なんて思えていない。
律己先生は、それを見抜いたのかもしれない。
「熱心に仕事に取り組んでいると……最近思いながら見ていた」
すぐ側で聞こえてきた声は、いつも診療室で聞いている声と比べ、どこか優しく聞こえる。
身じろぎ一つせず、その声に耳を傾ける。
気付かないくらいのほんの少しだけ、抱き締める腕に力がこもった。
「だからこんなことで……仕事を辞めたくなったのなら、勿体ない」