冷徹ドクター 秘密の独占愛


自分の仕事をしながら、私のことも気に留めて見ていてくれたことに、こんな状況ながらジーンと胸が熱くなった。

やる気がないなら辞めろと厳しい言葉を掛けてきた律己先生にそんな風に言われるのは喜びも一入。

地道な努力は無駄ではなかった。

それをやっと実感する。


「辞めたいとは……思ってないです」


どうしても向いてない仕事だとか、やっていく自信が無くなってしまったりだとか、自分自身の問題で職を手放すなら仕方ない。

だけど、周りからの妨害で自分の仕事を諦めたくはない。

ましてや、今回みたいなことに怯えてなんて絶対に有り得ない。


でも……。


「大学にまだいた頃……学生だったお前が実習でうちの科に回ってきた」


落ち着いた静かな声を耳に、その内容に「え?」と咄嗟に聞き返したい衝動に駆られる。

はっきりと確かめる術がなかった、実習先で律己先生と出会っていたのかという事実。

やっと本人からその確証を得る。


「遠巻きに見学してる実習生ばかりの中で、浅木だけが積極的にアシストについてきたのが印象的だった」

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