冷徹ドクター 秘密の独占愛


鮎川先生の話だと、午前中はオペに入ってるって言ってたけど……この時間なら会って渡せるかな?


それにしても大学病院はやっぱり規模が違うと、病院内を歩きながら思っていた。

行き交う患者さんやドクター、スタッフの数といい、病院設備も充実している。

一人の患者さんを、様々な診療科目で連携して治療していけるのも、大学病院の特長だ。


こうして広い病院内を歩いていると、大学病院に実習に行っていた学生時代を思い出す。


「あっれ……千紗?」


当時のことを懐かしく思いながら歩いていた時、通りがかった交差する通路の右側から、会いたくない人の声が聞こえた。

嫌でも一瞬、足が止められる。


何でまた、ここまで来てわざわざ会っちゃうのかな……。


「なんだよなんだよ、奇遇だな」


いつものファイルと、何かの商品を持って、こっちに近付いてくる慎の姿に目を伏せる。

「お疲れ様です」と目を合わせずに言うと、慎は私のすぐ目の前まできて顔を覗き込んだ。

< 204 / 278 >

この作品をシェア

pagetop