冷徹ドクター 秘密の独占愛
「何でも……ないです」
顔を見て言うことができず、律己先生のオペ着の胸元を見つめながら答える。
気持ちを偽ると、嘘がバレてしまいそうで目を合わせることもできない。
「何でもなさそうには見えない」
私の様子がいつもと違うのは自分でも自覚している。
だけど、ここまできたら、“何でもない”を貫き通すしかない。
「変な誤解させてしまったのでしたら、すみません。抜けてきたので、早く、病院に帰らないとと思いまして」
努めて笑みを作り、普段通りを装う。
「本当に、何でもないので、気にしないでください」
そう言ってみても、律己先生の表情は変わらなかったけど、私は「帰りますね」と言って一人足速に部屋をあとにした。