冷徹ドクター 秘密の独占愛


まだ帰ってきてないんだ……。


律己先生が帰ってくるまでには気持ちの整理をきちんとして、昼間のことは気のせいと思ってもらうくらい平静を装おう。

そんな決意をしてリビングダイニングに続くドアを開けると、振り向いた目とバチっと視線がぶつかり合い、思わずその場で動けなくなってしまった。


そこには、まだ帰ったばかりなのか、スーツの姿のままソファーに腰掛け何か本を見ていた律己先生の姿がある。

まさか帰っていたなんて思ったもみなかった私は、思考回路が完全停止。

律己先生の顔を見つめたまま動けなくなってしまう。


「あ……帰られてたんですね」


咄嗟ににこりと笑っていた。

固まったままでは、また昼間の二の舞になる。

そんな私を見つめた律己先生は、無言のまま手にしていた本を前のローテーブルへと置いた。


「何か食べてきましたか? まだなら、今から作りますね」

「やけに明るく振舞ってるな」


帰ってきてから初めて聞く律己先生の声に、ドキンと胸が嫌な音を立てる。

キッチンに向かいかけた足が再び止められていた。

そんな私の様子を探るような目で見つめる律己先生は、ソファーを立ち上がりゆっくりとした足取りでこちらへと近付いてくる。

すぐ目の前まで迫られると、昼間のように顔を見上げることがやっぱりできなかった。

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