冷徹ドクター 秘密の独占愛
「何を言われた」
「え……?」
「あの営業に何か言われたんじゃないのか?」
律己先生は私の心境を見透かすようにズバリ言い当ててしまう。
ご名答……だ。
ずっと、あの時の慎の言葉が引っかかっている。
田島先生とのことを吹き込まれてから、今日はずっと沈んでいる。
「黙ってるってことは、やっぱりそうなんだな?」
「違、違います。何も言われてなんか――」
「お前が黙ってるなら、俺が先に言わせてもらう」
そう言った律己先生は、いきなり私の両肩を掴む。
急なことに驚いてすぐ前に立った姿を見上げると、律己先生は顔を上げた私を近距離でじっと見つめていた。
「気に食わない……何であの男が、未だにお前のことを下の名で呼んでいる」
表情は変えないものの、律己先生はそんな不満を口にする。
あの時、どういうつもりか慎が去っていく私を“千紗”と呼び止めたのは確か。
私だって意味がわからないと思った。
いつもの癖でつい、なのかもしれないけど、よりにも寄って、先生たちの前で、何でって……。