冷徹ドクター 秘密の独占愛


「いつものですね、了解しました! あっ、谷口さん、今日スカートだ!」


更衣室から出てきた谷口さんを見て、中田さんが声を上げる。


「うん、今日午後から上の子の保護者会なんだよね」


午前中だけ働いているというパートの衛生士、谷口沙耶(たにぐちさや)さん。

小学生の女の子と、幼稚園生の男の子を持つママさんだそうだ。

柔らかい雰囲気のザ・大人の女性といった感じの人で、物腰も柔らかく患者さんとの会話もすごく丁寧だった。

午前中、衛生士業務についての説明や、衛生士実地記録の書き方などを教えてもらったけど、私にもわかりやすく親切に指導してくれて、この人が衛生士さんで良かったとホッとした。


「じゃあ、お先に失礼します。浅木さん、午後よろしくね」

「あっ、はい! ご指導ありがとうございました。お疲れ様でした」

「お疲れ様〜」


ひらひらと手を振りながら休憩室を出ていく谷口さんを見送ると、財布を手にした中田さんが「じゃあ、私たちも行きましょうか」と閉じたばかりのドアに向かっていった。

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