冷徹ドクター 秘密の独占愛


「私、午前中見ちゃいたましたよー。律己先生が浅木さん小突いてるの! あんなこと、今まで見たことないですし!」


中田さんは関さんの時のあれを目撃していたらしい。

わざわざ箸を止めて「何ですか、あれ!」と私を見る。

そんな話に黙っていないのは律己先生信者の下村さんだ。

今日は受付けを担当している下村さんは「何それ!」と中田さんに食い付く。


「いや、律己先生がね、浅木さんのとこに来て、頭をコツっとね。顔も全然怖くないの、むしろ微笑みかけてるって感じで」


その時見た律己先生の様子をジェスチャーを交えて中田さんは説明する。


な、な、中田さーん!
もうそれ以上はやめてぇー!

心の中の私が絶叫する。

それを聞いた下村さんは、中田さんから私に視線を向け、「浅木さん、どういうことですか!」と真顔で噛み付いた。


「え、いや、ほんと、別に何もなくて、私が関さんと話し込んじゃってたからかと……」

「えー! 私も律己先生に小突かれたいー!」


論点ずれしている下村さんの騒ぎに、鮎川先生が「あー、うるさいうるさい」とツッコミを入れる。

下村さんは「だってー、羨ましすぎる!」とボリュームをさげることなく言い返した。

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