冷徹ドクター 秘密の独占愛


全くこっちの声は届いていない。

噛み合わない言動、いってしまっている視線。

もうまともに話して通じる状態でないのは明らかだった。

迫られる距離が目前まで接近して、持っているバッグを胸に抱き締める。


「あなたのことは……好きでも何でもありません! もう私の前に現れないで!」


意を決してはっきりと拒否の言葉を浴びせ、追い詰められたその場から飛び出すように一歩を踏み出す。

でも、勢いよく腕を取られ、強い力で動きを封じられてしまう。

私を捕まえた津田さんは物凄い力で掴んだ腕を引っ張り始めた。


「いやっ、離して!」


もうだめだ。

絶望に全身が硬直した時……。


「千紗っ――」


愛しい人の声が叫ぶように私を呼んだ。

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