冷徹ドクター 秘密の独占愛


「この間、ここに来たでしょ。あの時、あなたの様子はおかしいし、律己は慌ててあなたを追いかけていったし、どういうことか問い詰めたのよ」


そんなことを話しながら、田島先生は私の掛けていた長椅子に腰を下ろす。


「その時、あなたが私のことを気にしてるいるから、これ以上余計な心配掛けたくないって言われたの。大事だから、手放したくないからって……あの律己が、そんなこと言うなんて驚いたわ」


そう言うと、「今まで彼女がいたって、私にそんなこと言ったことないくせに」と皮肉っぽい笑みを浮かべた。


田島先生からの話を聞いて、こんな時なのに不謹慎にも嬉しい気持ちで胸がいっぱいになってしまった。

律己先生がそんなことを田島先生に言ってくれていたなんて……。


「でも、こんなことになったなら、黙っておけない」


田島先生は大きな瞳でじっと目の前に立つ私を見上げる。


「右手……ナートが必要な怪我だって聞いた。私たちが手を使えなくなるのは、あなたならどういうことかわかるでしょ」


田島先生の厳しい口調に、ハッと目が覚めるような感覚に襲われた。

津田さんが現れたことや、刃物を所持していたこと。

それに律己先生が怪我をしたことで自分を責めるばかりで、その先のことまでまだ考える余裕がなかった。

田島先生の逸らされない目を見つめ返しながら、心臓が鋭い刃物で抉られたような痛みを感じる。

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