冷徹ドクター 秘密の独占愛
「縫うような怪我をしたら、確実に明日からしばらく患者は診れなくなる。診療に穴が空くということよ」
掛けたばかりの長椅子から立ち上がり、田島先生は真正面から厳しい視線で私を凝視する。
責めるような目に射抜かれて、何も返せる言葉なんて見つからなかった。
「あの、私……」
「彼のことを想うなら、これから先のこと、ちゃんと考えた方がいいと思う」
律己先生のことを想うなら、自分が、どうしたらいいのか……?
「浅木千紗さんですね」
田島先生と二人きりだった静かな廊下に、いつの間にか私たち以外の人の影が現れていた。
名前を確認するように呼ばれ振り返る。
そこには、スーツを着た中年の男性と、私と同い年くらいの男性が二人立っていた。
名前を聞かれ返事を「はい」とすると、中年の男性は懐から警察手帳を出して私に見せた。
「お話を伺いたいので、署までご同行願えますか」
「はい、わかりました……」
私の返事に、隣にいた田島先生は「律己のことは大丈夫だから、行って」と言う。
警察官二人に軽く会釈すると、律己先生のいる処置室へと入っていった。