冷徹ドクター 秘密の独占愛
「本当に、申し訳ありませんでした」
掛けてと言われて腰を下ろしてすぐ、私は深々と頭を下げた。
「浅木さん、頭を上げて。ほら」
院長の優しい声にゆっくりと顔を上げる。
院長も奥さんも、私を咎めるような厳しい表情は全く浮かべていなかった。
むしろ、心配そうな、どこか申し訳なさそうな複雑な色が窺える。
「謝るのは、私の方だ。うちに来院した患者が原因で、浅木さんに怖い思いをさせてしまったんだから」
「いえ! そんなことはないです! それは、誰にもどうしようもないなかったんです。だけど……私のせいで、律己先生が……」
今朝早く、律己先生から連絡があった。
電話が通じて即、律己先生は「大丈夫か?」と私を心配する言葉を掛けてくれた。
それは、私が一番に言うべき台詞。
込み上げる涙を、必死に堪えていた。
もし泣いているのがバレてしまえば、いらない心労をかけてしまう。
通話を終えるまで、涙が溢れないように私は天井を見上げていた。