冷徹ドクター 秘密の独占愛
突然の私の申し出に、二人の顔が驚きを見せた。
「どうして」と口をついて出てきたような院長の言葉に、目を伏せ笑みを浮かべる。
「急なことを言い出して、申し訳ないと思ってます。でも、今回のことで、実家の両親が今すぐ戻って来いと言い出したんです。昨日そんな話をしたら、今朝、母がショックで具合が悪くなってしまったと連絡があって……」
全て私の作り話だった。
こんないい人たちに嘘をつくことは、この上なく胸が痛む。
だけど、こうでもしないと、ここを去ることを許してもらえないと思った。
心配をして具合が悪くなった親に帰って来いと言われたと言えば、無理に引き止めることはできないと思った。
「そうか……」
院長の沈んだ声が静かな応接間に落ちる。
「こんなことになって、ご実家のご両親にも心配を掛けてしまったわね……」
「いえ、大丈夫です。ただ、少し驚いたようで。自分たちの側に居てくれたら安心だからって、言われまして……」
私の話に、院長は普段見せないような神妙な顔付きでしばらく黙り込んでいた。
そして、「浅木さん」と静かに私の名を呼んだ。