冷徹ドクター 秘密の独占愛



ジリジリと照り付ける八月の太陽が目に眩しい。

残暑は今年も厳しく、今日は最高気温が三十六度なんて恐ろしいことを朝の天気予報で言っていた。

濃いピンクや白の花をこんもり重そうにつけた、サルスベリの街路樹が続く田舎道。

今日は今から、例の小山歯科医院へと初出勤する。


小山先生のところで雇ってもらえばと母が提案してきてあの日。

本当に来院時に私のことを売り込んたらしい母は、帰ってくるなり私に履歴書を書けと急かしてきた。

病院の帰りに用紙まで入手してきたらしく、ペンを突き付けてくるやる気っぷり。

渋々作った履歴書を持って翌日には小山先生に渡しにまで行ってしまい、面接パスでいきなり出勤してほしいという話を持ち帰ってきた。

母が患者でもう長く通っているし、その娘さんなら、という感じで話はまとまったらしい。

そういう緩い感じは、さすが田舎だなぁと思ってしまう。

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