冷徹ドクター 秘密の独占愛
小山先生のところは、話によると跡を継いだ息子の現院長と、母より歳が上だと思われる助手さんが二人という医院。
昔の私が求めていた、緩い感じの歯科医院だ。
来院する患者さんも、この辺りに住む年配の方が多いと聞いている。
見えてきたこじんまりとした『小山歯科医院』の看板に小さなため息が出た。
以前の私なら、この話に喜んで食い付いた。
だけど今は、どこか物足りなさを感じてしまっている。
それはきっと、東條歯科医院で大変でも充実した仕事をしてきたからだ。
「おはようございます。浅木です」
曇りガラスになっている医院のドアをくぐると、チリンチリンとドアベルが鳴る。
入った医院はまだ診療が始まる前の静けさに包まれていた。
私の掛けた声に、奥から「は〜い」と女性の声が聞こえてくる。
受付けに出てきたピンクの白衣を着た人は、五十代後半くらいに見える女性だった。
白髪交じりの肩までの髪と、刻まれた顔のしわ。
この方が話に聞いているこの医院の助手さんと思われる。
「今、先生きますので、お上がりください」
「あ、はい」
スニーカーを脱いでスリッパを履こうと見たラックには、大人用スリッパが四セットのみ用意されていた。