冷徹ドクター 秘密の独占愛
「バー類の在庫は、この辺りの引き出しに入ってて、その下の引き戸の中はアクリノールとか生食とか、薬剤関係」
院長直々に医院内の案内をしてもらうのを聞きながら、メモを手にペンを握る。
眼下には、助手さんが着ていたのと同じピンク色の白衣。
本当に面接なく仕事の説明が始まって、内心驚いていた。
少しくらいは面接もどき程度でもあるかと思っていたのに。
初めてお会いする若先生……小山元院長先生の息子さんは、歳のころは二十代後半から三十代前半あたり。
ひょろっとしていて、対面して立つと私より少し大きいくらいの背丈の小柄な人だった。
くせ毛の黒い短髪に色白の肌。
メタルフレームの眼鏡の向こうには、つぶらな瞳が覗く。
病院前に掲げられたいた診療案内には、十時からの診療と書いてあった。
だけど、十時を過ぎた今も、来院する患者さんの姿はない。
「そういえば、東條先生のところで勤めていたんだね」
え……?