冷徹ドクター 秘密の独占愛
九時からの診察を前に、受付横にはすでに来院した患者さんのカルテが並べられている。
副院長は私との挨拶を終えると、さっさとカルテを見に去っていく。
そして、「入れて」と受付にいた下村さんに声を掛けた。
「おはようございます。渡辺さん、一番目にどうぞ。川口さん、二番目へ――」
一気に待っていた患者さん三人が診療室に通される。
いよいよ始まってしまった。
不安になっている暇もなく、入ってきた患者さんにエプロンを掛ける。
各ユニットにドクターがつくと、患者さんに前回の治療後の様子を聞いたり、今日の治療についての話をし始めた。
「浅木さん」
少し離れて様子を窺っていた私に、受付にいた下村さんが小走りで近付き小声で話し掛けてくる。
「一番の律己先生の患者さん、衛生士さんの枠になってたので、多分呼ばれると思いますよ」
「えっ」
マジか、いきなりか。
難ありという副院長の動向を少し窺いたかったのに、そうも言っていられない状況らしい。
頼みの綱の谷口さんは今日はパートがお休みの日で、衛生士は私だけ。
どうしよう、どうしよう、と心臓が忙しなく動き出す。
「お願いします」
そうこうしているうち、こっちに向かって声が掛けられる。
マスクをした副院長の顔が私へとがっつり向いていた。