冷徹ドクター 秘密の独占愛
「先生、すいません……BOPって」
「……は?」
鋭いように見えていた目が、本格的に鋭利さを増して私を凝視した。
あまりの恐ろしさに、手に持つグローブをギュッと握りしめる。
「……もういい。自分で取る」
怒る気も失せた。
再びチェアーに腰を下ろした副院長は、そんな心情をありありと発していた。
初っ端からすでに呆れられてしまったような空気が漂い、その場にいることさえ居たたまれなくなる。
「下村さん、手空いてる? 記入して」
「あ、はい!」
まるで、もう存在しないものとされてしまったように、副院長は検査の記入を下村さんに指示する。
出だしからつまずいてしまった。
そんな焦りに追い詰められながら、マスクの中の顔は汗でしっとりと湿っていた。