冷徹ドクター 秘密の独占愛
「こちら、抜歯後の注意事項になります」
傍らで治療を見守っていた娘さんに抜歯後の注意事項の紙を手渡す。
抜歯は驚くほどあっという間、瞬殺で終わった。
すでに動揺している歯だったから難抜歯ではなかったけど、あまりの速さに私はもちろん、見ていた娘さんも拍子抜けした感じだった。
娘さんはきっと、抜歯というから大掛かりなものだと思っていたのだろう。
「元々かなり揺れていた歯なので、出血量も少ないと思います」
抑揚はいつも通りのものの、丁寧な口調で副院長は娘さんに治療後の説明を始める。
トレーの上の外科器具を片付けながら、その会話に耳を傾けた。
「あの先生、血圧の薬なんですが、血がサラサラになる薬みたいで、飲んでいても大丈夫でしょうか? 抜いたところから血が止まらなくなったりとか……」
「問題ありません。休薬は治療前にするものですし、今回のような抜歯では必要はなかったので普段通りで大丈夫です」
「そうなんですか。良かった」
「もし何か気になることがありましたらご連絡ください」