冷徹ドクター 秘密の独占愛



親子とはいえ、まるで似ていない。

私たちとはもちろん、患者さんとも一線を引いている感じは、気さくな院長とは間逆。

あの院長に育てられて、どうしてこうなるのだろうか。

やっぱり会話のない車内で、そんなことをぼんやり考えていたときだった。


「無駄な器具が出すぎだった」

「……えっ、あっ、はい!」


唐突に発された言葉に、素っ頓狂な声を出してしまっていた。

急にさっきの抜歯の話をされ、トレーに並べた外科器具を振り返る。

確かに、使っていたのはヘーベルと鋭匙(えいひ)のみ。

抜歯鉗子や縫合器具は使っていなかった。


「対象歯の状態で使う器具を選べなければ無駄が増える」

「はい……」

「臨床は教科書通りにやるものではない」

「……すみません」

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