冷徹ドクター 秘密の独占愛


念のため、注意されないため、とやったことが仇になったらしい。

言われてから出すのではとろいと思われるだろうと万全にしたのに、まさかそこを駄目出しされるとは。


「他のドクターは知らないが、俺は抜歯に鉗子は基本使わない。覚えておけ」

「はい、わかりました……すみませんでした」


謝りながら、今日は注意するだけじゃないんだ、なんてふと思う。

次回を見据えて助言してくれるとは思ってもみなかった。

まだ私にアシストをさせる気はあるらしい。


エプロンのポケットから仕事用のメモ帳を取り出し、今日の抜歯の記録を残す。

鉗子は基本使わない……と。

間を持たせるのにもちょうど良く、メモを取ることに集中していると、視界が急に薄暗くなった。


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