冷徹ドクター 秘密の独占愛


「あー、今思い出しても胃がきゅっとなるわ……」

「だったら何であんなバカなことしたわけよ」

「あれはー、ちょっとノリでさ、ねぇ、千紗」

「何がノリだよ。計画性がなさ過ぎだから」


華世と凛の話を耳にしながら、私はあの忘れもしない専門時代の大事件を思い出していた。


あれは、専門二年生の実習期間中のこと。

残りわずかとなった実習で、私と華世は日本橋歯科大学への二ヶ月間の実習に行っていた。

日本橋歯科大学病院、通称、日歯の実習では、二ヶ月間の間、総合歯科、補綴(ほてつ)科、小児歯科、歯科口腔外科の各診療科目を二週間交代で回る。

約二十人ほどの実習生で伺い、各科をグループに分かれて実習するわけだけど、学校が決めたグループ分けで、運良く華世と同じグループに振り分けられていた。

私と華世が入ったグループは、総合歯科、小児歯科、補綴科、歯科口腔外科の順に実習に回った。

順調に実習も最後の週を迎え、口腔外科実習の最終日のこと……。

私と華世は、のちに大騒ぎとなる前代未聞の大問題を起こしてしまったのだ。


< 61 / 278 >

この作品をシェア

pagetop