冷徹ドクター 秘密の独占愛
多恵の言うことに、私は黙り込むしかなかった。
自分でも自覚している。
私は、昔からとにかく流されやすい。
華世みたいなぐいぐい来てくれる相手には、特にすぐ身を任せてしまう。
でもそれは、仕方なくとかではなく、自分で良かれと思ってしてきたことだ。
良く言えば、空気を読める。
厳しい言い方をすれば、流されやすい。
流されて心地よいときもあるけれど、このときのように後悔することも今まで数多くあった。
「もうっ! その話はいいからさ、今は千紗んとこの副院長の話でしょ。何で持ってたわけよ」
ああ、そうだ。その話だった。
「んー……よくわかんないんだよね……。あんまり話す人じゃないし、何考えてるかわかんないし、顔恐いし。とても聞ける雰囲気じゃないっていうか……」
本人になぜ持っていたのかを聞くのが一番手っ取り早いけど、それが出来ていたら話はこんな難しい展開にはなっていない。
すると頭のきれる凛が、考えもしなかった、でもごもっともな意見を口にした。