冷徹ドクター 秘密の独占愛
午前中に毎日注文を取りにやってくる材料屋さんの声に、カルテの記載をしながら普段通り挨拶を返した。
だけど、その驚いたような声が呼んだのは私の下の名。
しかも呼び捨てだ。
何事かと顔を向けて、驚きは私に伝染した。
「えっ、何で……」
そこに見た顔にぱかっと口が開いてしまう。
目が合うと同時、相手の表情がパッと明るくなった。
「やっぱ千紗だ。何だ、東條先生のとこに移ったのかよ」
消毒室の奥へ入ってくると、固まったままでいる私の目の前までやってくる。
誰かに見られたら不審に思われる距離感に迫られ、無意識に身を引いた。
「久しぶり、千紗。会いたかったよ」
悪いけど、はっきり言って私は会いたくなかった。
もう、会うこともないと思ってたのに、どうしてここでまた再会しちゃうかな。