冷徹ドクター 秘密の独占愛
今になって思い出しても悍ましい。
あんなことをぬけぬけと言っておいて、またやり直したいなんて話を私が受け入れるとでも思ったのだろうか。
だとすれば神経を疑うし、やっぱり最低だ。
これからまた顔を見なくてはいけないと思うと気が滅入る。
封印した忌まわしい過去が毎日蘇るなんて、病んでしまいそうだ。
せっかく眠りに出てきたのに、おかげでちっとも気が休まらない。
横たわった体を身じろぎしながら、少しでも眠ろうと再び目を瞑った。
私が今、素敵な恋愛でもしていれば、こんな気持ちにはならなかったのかな……?
忘れたい過去が入る隙間もないような、素敵な人に出逢っていたのなら……。
なんて夢見がちなことを考えていた時だった。
受付けの方から扉がカチャっと開く音がした。
横たわったまま顔だけを向ける。
次に聴こえてきたのは扉をガチャンと閉じる音で、咄嗟に目を閉じ直した。
受付け近くで扉の開閉をする場所は、先生たちがいる医局しかない。
足音がしてきて、不自然に受付け方面に顔を向けたまま固まる。
恐る恐る薄目を開けてみると、受付けの内側に佇む後ろ姿がぼやけて見えた。
長身が着こなす、ネイビーのスクラブ白衣。
突如現れた副院長に、思わず目を開いてしまっていた。