溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
小一時間ほどして、プロの手により変身させられた花梨は美容室から出てきた。まさに変身。
シャンパンゴールドのイブニングドレスとハイヒール。膝下が広がったマーメイドスタイルのドレスは、胸元にパールビーズがちりばめられ、胸から上はレースになっていて、同じくレースの半袖につながっている。
いつもはすっぴんと大差ないナチュラルメイクだが、マスカラやアイライン、ハイライトまでばっちり施された。剛毛でいうことを聞かない髪も、プロの手に掛かればおとなしくきれいにアップにまとめられパールの髪飾りに彩られている。
美容師さんはネイルもなんとかしたかったようだが、新條を待たせているのでそれは断った。
残念そうにする美容師さんに、パールのネックレスとイヤリングをつけてもらって、花梨の変身は完了。
これだけ変身していれば、新條も誰だかわからないんじゃないだろうか。そんなことを考えながら、借り物の小さなハンドバッグに貴重品だけつめて、待合室へ向かう。
ソファに座ってスマホをいじっていた新條が、花梨の姿を見て一瞬目を見張った。やっぱ驚いたか。
しかし、すぐに席を立ってニコニコしながら早足で近づいてくる。
「ドレスアップした花梨は初めて見たからびっくりしたよ。すごくきれいだ」
「ありがとう」
「オレもフォーマルに着替えればよかったね。ビジネススーツじゃ釣り合わないよ」
「そんなことないよ。大丈夫」
あんたはジャージでもイケてるくらい中身のグレードが違うから。
内心ツッコミを入れていると、新條が慣れた手つきで腰に手を回してきた。ちょっとドキドキして思わず顔を見つめる。新條はにっこり微笑んで平然と促した。
「じゃあ、行こうか。おなか空いたし」
「う、うん」
その極上の笑顔に鼓動は益々早くなる。ここで動揺してたらせっかく変身したのに素人丸出し。
これは御曹司さまの優雅なエスコートだと自分に暗示をかけて、新條の導くままにエレベータに乗り込んだ。