気まぐれな君は
「ありがと、都築さん。助かる」
「都築さん、ありがとね!」
「うん。よろしくお願いします」
小さく頭を下げて、整理のつかない気持ちを一度押し込めて笑った。
じゃあ、と急に真白くんが立ち上がる。おう、と応えた柳くんも一拍遅れて立ち上がる。訳の分からないままに、私も二拍遅れて立ち上がった。
「今日は帰ろうか!」
いつの間にか、部員は集まっていたらしい。
私たちと離れたところにいる部員たちは、どうやら気を使ってくれたようで話を聞かれている様子はなかった。元より、集合率は決してよくない緩い部活だ。私たち三人の方が珍しいと言える。
って、ちょっと待って。
「帰るの?」
このまま説明されるんだと思っていたんだけれど、どうやら違うらしい。
「多分、このまま説明しても都築さんもっと混乱するから。今日はここまでにして、明日また時間取った方がいいと思う」
確かに否定はできなかった。知りたい気持ちはあるけれど、焦るのはよくないと思った。
私はあまり頭がいい方ではない。考えるのにちょっと時間がかかったりする。だったら多分、言われた通り今日はここまでにしておいた方がいいんだろう。
「分かった。じゃあ、また明日?」
「まあそうなるな。で、明日は部活日じゃねえから」
「都築さんがよかったら、うちに来ない?」
「……真白くんち?」
別に構わないのだけど、嗚呼、客観的に見たら同級生男子の家に付き合ってもない女子が行く構図になるのか。
「……まあ、大丈夫でしょ。一番都合いいの、真白くんちだろうし」
誰かに聞かれないという面で。
真白くんはちょっと複雑そうな顔をしていたけれど、じゃあそれで、という話になった。そんな真白くんを、静かに柳くんが小突いていた。
とにかく、私が今日することは自分の中で気持ちの整理をつけること。あと、少し病気についても調べてみようと思う。
「じゃあ、また明日ね。真白くんはちょっと庇っても顔色いいとは言えないから早くおやすみなさい」
「大人しく寝ます」
私の言葉に、二人が笑う。駅で二人と別れると、私は一人、帰路へ着いた。