time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
このままじゃ、駄目になるとわかっていながら俺は引っ越しの日を迎えてしまった。
お前の荷物が入った段ボールを運んでいる。
「荷物ってこれだけかよ?」
段ボール3つしかない引っ越しなんて聞いたことがない。
「それだけ。」
「家具とかは?」
「全部、あたしの物じゃない。」
「そうか。」
ここにある物はすべてあの男が揃えてくれたってわけか……
また嫉妬の渦が俺の心を支配する。
段ボールを駐車場まで運んだはいいが、ここからはどうやって運ぶんだ?
煙草をくわえながら、カナが来るのを待った。
「全部終わった。もうここへ来ることもないな。」
数分後、俺の隣に並んだお前はマンションを見上げる。
今、何を思ってる?
俺との人生を選んだことを本当に後悔していないのか?
声に出来るはずのない言葉を飲み込み、煙草を地面に投げ捨てた。