time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
何かにとりつかれたように、すべてを話し終えたあたしは、その勢いのままグラスに口を付けた。
「そうだったのか……。」
カラカラに乾いた喉に、ぬるくなったアルコールが気持ち悪く染み渡る。
「それなら、すべてを話したほうが良さそうだな。」
あたしに語り掛けているとは思えないような口調の文ちゃんは遠くを見つめている。
「やっぱり何か知ってるんだ。」
「あぁ。俺の苗字も浅葱だ。」
「えっ?」
カタン
あたしは驚きのあまり、手に持っていたグラスをテーブルに落としてしまう。
「驚くとは思っていたけど、いい反応だ。」
アハハと文ちゃんは笑っているけど、あたしにとっては笑い事じゃない。
「どういうこと?」
「カナの客の浅葱は俺の姉さんの旦那。」
そんな……
結婚しているとは聞いていた。
でも、奥さんが文ちゃんのお姉さんだなんて……
あたしはとんでもないことを話してしまったんじゃない?