ヒステリックラバー



雪の予報も増えた2月の上旬。期限の迫った書類を処理した私は慌てて退社すると百貨店に寄り、正広や職場の男性社員のためにバレンタインのチョコレートを買った。
閉店時間のギリギリであまり選ぶ時間もなかったけれど、値段がちょうどいいものが買えた。

もう2週間以上も正広に会っていなかった。そんなことは珍しくないけれど、電話もLINEも一切しないというのは珍しい。
付き合ってからの期間が長いとはいえ会えないことを寂しく思い始めていたし、今度はいつ会えるのかもわからない。外食しようという話も結局まだ実現できていない。

ならば今から正広にこのバレンタインのプレゼントを渡しに行くのもいいかもしれないと突然思い至った。フロアのエスカレーターの横に寄るとスマートフォンを出して正広に電話をかけた。

「……もしもし」

疲れた正広の声がスマートフォンを通して聞こえる。

「あ、私だけど今家?」

「……そうだよ」

「今から行ってもいい?」

「え? 今?」

電話の向こうで正広が焦った気配がした。その様子に私も残念な思いが胸に湧く。

「だめかな……?」

正広は私に会えないことを寂しく思っていないのかもしれない。なんて嫌な考えを頭から振り払う。

「いや、いいけど……飯もう食べちゃったよ」

「そっか……大丈夫。私は何か適当に買うから」

正広がもう夕食を済ませてしまったことにがっかりした。自分が正広の家で1人で夕食を食べる姿を想像したら寂しくなった。けれど突然行きたいと言ったのは私だし、正広に会えるなら1人で食べるくらい小さな問題だ。

「じゃあ今から行くね」

「おう」

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