ヒステリックラバー

電話を切って惣菜コーナーでおかずを買った。その辺のスーパーやコンビニよりも高くて躊躇うけれど、正広に早く会いたい思いが強くて無駄な時間は省略したい。自分の夕食を買う時間を削ってでも1分1秒でも早く正広の顔が見たかった。
付き合ってからの期間が長くても私の正広への想いは根強くなっていた。

小走りで正広の家の前に着くとチャイムを鳴らした。合鍵はもらっているけど部屋の中に正広がいるのに私から積極的に使いたくない。恋人とはいえ正広のプライベートに図々しく入り込むのは遠慮したい気持ちもあった。
部屋の内側から鍵が開けられ、ドアの向こうから髪がしっとりと濡れた正広が顔を出した。先にお風呂に入っていたのだろう。

「ごめんね急に」

「いいよ」

首にタオルをかけた正広はドアを大きく開けて私を部屋に招き入れた。

「米なら少し残ってるけど」

そう言って正広はキッチンに置かれた茶碗を差した。茶碗に盛られたご飯はラップをかけられ、内側に水滴がついている。まだ少し温かそうだ。

「じゃあいただこうかな」

おかずはあるのでお米があるのはありがたい。
正広は早く仕事が終わった日は自分で料理もする。お互い大学に進学してから1人暮らしを始めてもう8年になる。もしかしたら正広は私よりも料理が上手いかもしれない。

「おかずは買ってきたんだ。正広も食べる? ビールも買ってきたよ」

「じゃあ飲むわ」

ローテーブルに食器を並べて2人で座った。
正広は缶ビールを片手に時々つまみを口に入れて、バラエティ番組を見てゲラゲラと笑っている。私は正広と過ごすそんなゆっくりとした時間が好きだった。

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