ヒステリックラバー

「あ、渡し忘れるところだった。はい、バレンタイン」

カバンから先ほど買ったバレンタインのチョコレートの包みを出して正広に渡した。

「お、さんきゅー」

正広は綺麗に包まれた箱をよく見ないで包装紙を破っていく。百貨店のロゴがプリントされた包装紙はそのプレゼントの可愛さを打ち消されるほどビリビリに破かれた。そして正広は箱から出したチョコを眺めることもなくすぐに口に放り込んだ。3種類のベリーがチョコでコーティングされたプレゼントは味の感想をもらえることすらもなく完食された。
何年前からだろう、手作りのチョコレートを渡さなくなったのは。こうやって見た目を重視しない正広に呆れたからだったか。

「ありがとう」

「どういたしまして」

正広が淡白なのは今に始まったことではない。元々の性格なのと付き合いの長さがそうさせる。

お互いに社会人になって4年。そこそこに貯金もできてきた。私は結婚しても会社を辞めるつもりはないし、会社は子供を産んでからも仕事に復帰できる環境がある。
チューハイを飲みながら私は2人の未来のプランをぼんやり考えていた。





後片付けをして正広の家の使い慣れたお風呂に入り、私専用のシャンプーやボディーソープで全身を丁寧に洗う。バスルームから出ると見慣れた柄のバスタオルで体と髪を拭く。以前に私が持ち込んだドライヤーを洗面台の引き出しから出して、いつものように髪を乾かした。置きっぱなしの歯ブラシで歯を磨いて、入念に鏡で自分自身をチェックする。そうして緊張しながら先にベッドに入ってしまった正広の布団にいつものように潜り込んだ。

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