ヒステリックラバー
背中を向けて横になっていた正広は私が布団に入ってくると弄っていたスマートフォンを枕元に置いた。
それを合図に私も体を横に向けて右に寝る正広のお腹に左腕を回す。額を正広の肩につけると後ろから抱きしめているような格好になった。
遠まわしに、けれど確実にわかるように誘った。
正広と最後に身体を重ねたのはいつだったのか思い出せない。それどころかキスだっていつ以来だろう。
長く付き合っていればスキンシップも減るのは仕方がないことかもしれない。けれど今日こそは愛情の再確認をしたいと私は意気込んでいた。
頭を上に向けて正広の首の後ろにキスをした。精一杯の愛情を込めたキスだ。けれど正広の反応はない。
「正広?」
「………」
左腕に力を入れて正広を強く抱きしめた。その私の腕は正広の手によって引き剥がされた。
「ごめん……今日はもう寝たいんだ……」
「あ……そっか」
正広から体を離して仰向けになった。正広から断られてしまってはもうこれ以上自分から行動なんてできない。
「疲れてるの?」
「ごめん……」
「うん……いいよ……」
そう返事をしても予想外の展開に思った以上にショックを受けた。疲れているのは仕方がない。急に押しかけたのは私の方なのだから。でもまさか拒否されるとは思っていなかった。
実感したかった。付き合いが長くてお互いの存在が当たり前になっているとしても『愛されている』と。
しばらくして正広の寝息が聞こえてきた。寝返りをうった正広の体は仰向けになり、左手が私の腰に当たった。本人の意思ではなくても正広から私に触れてきたことが嬉しい。こんな些細なことに嬉しさを感じるなんて惨めだ。右手でこっそりと私の体に当たる正広の左手を握った。強く握っても正広が握り返してくれることはない。
春を感じるほど暖かくなる日が増えてきたというのに、今夜は一際寒いと感じる夜だった。