ヒステリックラバー
苦笑いという言葉がぴったりくるほど私は不自然に笑う。「マンネリかな」と小さく言った。武藤さんはまたグラスを空にしたから自然な流れで私はビールを注いだ。
「じゃあ一緒に住んでみるのはどうですか?」
田中さんの提案に武藤さんはピクリと反応した。私は「うーん……」と煮えきらない声を出した。
「同棲したら結婚を意識するようになるかもしれないですよ」
その可能性はとっくに考えた。正広の家にほとんど毎日行っていた時期もあった。でもその時に一緒に住んでみよう、とはならなかったのだ。武藤さんのグラスは気づけばまた中身がなくなっていた。
「武藤さんすごい飲みますね」
そう言って私は立ち上がった。
「新しいビール持ってきますね」
話題を変えるいいチャンスだ。顔の赤い武藤さんが心配だけど私は従業員の女性の立つ壁際まで新しいビール瓶をもらうため歩いていった。
「とーだー」
同じく瓶ビールを取りに来たであろう山本さんに話しかけられた。
「武藤はあんま酒強くないから飲ませすぎないようにな」
「え? そうなんですか? 自分からすごく飲んでますけど」
「あいつ何やってんだ……まあもうやめとけ。部屋まで運ぶの大変だから」
「わかりました」
山本さんは瓶ビールを自分のテーブルに置くと宴会場のステージに歩いて行った。従業員からマイクを受け取ると満面の笑みで会場を見回した。スピーカーから山本さんの声が響いた。
「えー皆さんもう既に盛り上がっていると思いますが、この宴会場でカラオケもできるということで、歌いたい人はどうぞー」