ヒステリックラバー
「こら武藤! お前も踊れ!」
間奏に入ると強引に名指しする山本さんに武藤さんは面倒くさそうに手首を前後に動かし、こっちに振るなとでも言うように山本さんに合図した。
「美優さん、私たちも踊りましょ!」
田中さんは勢いよく立ち上がると私の腕を掴んだ。
「え、え!?」
戸惑う私を無視して酔っぱらった田中さんはステージまで強引に引っ張っていく。このままステージに上がってしまったらもう踊るしかない。私は恥ずかしさを堪え見よう見まねで同僚と一緒に踊った。実際に踊ってみるとそれはそれで楽しいのだ。
曲が終わりテーブルに戻ると武藤さんは頬杖をついて口をほんの少し開けて眠っていた。
綺麗な寝顔だ、と見入ってしまった自分に引いてしまう。武藤さんが苦手なはずなのに、綺麗なものを目にすると感情さえも誤魔化せてしまうらしい。
「武藤さん? 寝ちゃいました?」
私の言葉に武藤さんは目を開けた。
「すみません起こしちゃって……」
「いえ……」
このまま寝てくれたらいいのにと思ったけれど残念だ。武藤さんが起きてしまってはまた緊張してしまう。寝顔を見ていた方が何倍も楽なのだ。
「武藤さん、大丈夫ですか? 部屋に行った方がいいんじゃ……」
「ダンス……」
「え?」
「可愛かったですよ……」
武藤さんは掠れた声でそう伝えた。私は目を見開いた。
「みんなノリノリでしたからね……」
「戸田さんが……」
「………」
それっきり言葉が続かない。