ヒステリックラバー
『今日は早く終わったんだ。ご飯行く?』
思い切って正広にLINEをした。
『ごめん、今日は会社の送別会だ』
すぐに既読になって返ってきた返信に予想はしていたけれどがっかりする。お互い予定が合わないのは諦めるしかない。何年もこんな生活なのだから今更悲しんだって関係が変わるわけじゃない。
でも2人で外食しようと言っていたのが正広の中では無くなってしまっていることは悲しかった。
「何か仕事はありますか?」
大嫌いな武藤さんに一々お伺いを立ててから帰ることが増えた。
「あ……いえ、無いです」
「ではお先に失礼します」
武藤さんと一切目を合わせないで最小限の会話で業務を終える。
「戸田さん」
武藤さんが声をかけてきたのは聞こえているけれど、私は無視してフロアを出た。
田中さんの送別会も来週に予定されているのに、私は適当な理由をつけて欠席の返事をした。田中さんをきちんと見送りたい。でも武藤さんが出席する飲み会に参加できない。どうして私ばかりこんなに悩まなければいけないのだろう。
家で一人きりの夕食を終えてお風呂に入り、パジャマに着替えて寝ようかと思っていた時玄関のチャイムが鳴った。
え? こんな時間に誰?
夜の訪問者に警戒しながら気配を消してゆっくりと玄関まで移動する。ドアスコープから外を覗くと、そこには髪を乱した正広が立っていた。
「えっ、ちょっと……」
私は鍵とチェーンを外すとドアを開けた。
「どうしたの?」
「………」