ヒステリックラバー
正広は無言のまま玄関に入ってくると靴を脱いで私の横を通りリビングの床に倒れこんだ。
「正広? 大丈夫? 酔ってる?」
「うーん……」
「かなり飲んだの?」
「うーん……」
私が何を聞いても正広は目を閉じ唸り声を出すだけだ。
「気分悪い? 吐く?」
「あー……大丈夫……」
「上着だけでも脱ぎなよ」
正広の横にしゃがんで上半身を起こすと着ているコートを脱がせた。
「お水持ってくる?」
「いらない……」
「どうしたの? 急にうちに来るなんて」
普段の正広なら前もって電話なりLINEなりで連絡してから私の家に来る。それさえも何ヶ月ぶりかというくらいなのに、今夜のように連絡もなく来るなんて珍しかった。
突然正広の両腕が私を抱き締めた。
「え、正広?」
「………」
「まさ……」
再び名前を呼びかけた途端に勢いよく唇を塞がれた。食べられるのではないかと思うほど唇を強く吸われ、舌が口の中に侵入してくる。
「いっ!……んっ……」
強引なキスに社員旅行で武藤さんに迫られたことを嫌でも思い出してしまう。今度は酔った正広に舌を絡められたことに驚いて抵抗もできない。
正広は私のパジャマのボタンに手をかけて1つずつ外し始めた。指の動きだけは酔っているのが疑わしいほど器用に上から外していく。
恋人だというのに今まで身体を繋げることをあんなに拒まれ続けてきたのに、今になって突然求められることに戸惑う一方で自分の身体が火照り始めるのを止められない。この先の展開に期待するなという方が無理だ。