ヒステリックラバー

機嫌がいいと言われ思い浮かぶのは先日正広と勢いに任せて久しぶりに身体を重ねたことだ。重ねたといっても最後までできたわけじゃないけれど、その嬉しさから仕事にまで充実感を得られるようになった。

「その……色々と」

「男?」

「まあいいじゃないですか」

「ふーん。髪を染めたのもそのせい?」

昨日の仕事帰りに髪を明るく染めた。でもそれは正広の影響ではない。

「これはただの気分です。変ですか?」

「いや、明るめの茶色で戸田に似合ってるよ」

「ありがとうございます。根本が黒くなってましたし、どうせなら明るくしようと思って」

「あっそ。まあ理由はなんであれやる気が出るのはいいことだけど」

「そうですね……はは」

彼氏とのスキンシップに浮かれています、なんて正直に言えるわけがない。男のせいでやる気を左右されるなんて単純だと思うけれど、プライベートが順調なら仕事にだって身が入る。
関係が悪化することを恐れていたのに恋人らしい行為ができたことが私にとっては大きかった。

「山本さんコーヒー飲みます? 今淹れるんですけど」

「いや、俺はいいや。今から現場に行ってくる。戻りは遅くなるから定時になったら戸田は上がっていいよ」

「了解です」

マグカップを持ちながらエレベーターに乗る山本さんを見送ると給湯室に入った。棚からスティックシュガーを取り出したのと同時に給湯室のドアが開き私は目を見開いた。今一番会うことを恐れている武藤さんが入ってきたのだ。

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