ヒステリックラバー
「僕は以前女性を傷つけて傷つけられるような恋愛をしていました。もうそんな経験をしたくはない。だから好きになった人には極力近づかないようにしてきました」
私はポカンと口を開けた。
「よくわかりません……」
「ですよね」
武藤さんは悲しそうに「はは……」と笑った。
「怖かったんです。戸田さんに近づきたいけど、距離を縮めて傷ついたり傷つけてしまうのが。恋愛に臆病になっていました」
「…………」
「でも戸田さんにもっと思ったことを素直に出した方がいいと言われたことだけは酔っていても覚えていました。その言葉に僕は吹っ切れたんです。もう戸田さんには気持ちを隠したくない」
そう言うと私に向かってまっすぐ微笑んだ。
「僕は戸田さんが好きです」
何度も口にした武藤さんのストレートな想いは今の私には突然で重すぎた。
「あの、私には彼氏が……」
「知っています。だから付き合ってくださいとは言いません。ただ僕の気持ちだけ伝えたかったです」
顔を赤くした武藤さんはより一層かっこよくて素敵に見えた。いつも以上に力強い目をしている。
私への曇りのない想いをはっきり感じた。それが余計に武藤さんに対して申し訳ないと思わされた。ただ気持ちを伝えたいだけだと言われても困ってしまう。
普通の女性なら武藤さんに告白されたら舞い上がるのだろう。だってイケメンで優しくて将来有望な自慢できる素敵な男性。本来は誠実な人だ。絶対に私を大事にしてくれるだろう。告白の返事を断る理由がない。
それでも私には正広がいる。