君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
それで、今いるここはどこ?

この感じ、デジャヴだな。
鏡の部屋で目覚めたときも、こんな感じだったっけ。

…なんて、そんなことを考えてる場合じゃない。

私、連れ去られたみたいだし。

「やっと起きたか。
薬の分量が多すぎたのかと思ったが、大丈夫なようだな」

決して大丈夫な訳ではない。
そう心の中でツッコミつつ、胸のざわつきを抑える。

立派な椅子にどかりと腰かけて口を開いたその男性には、はっきりと見覚えがある。

「ナツキ王子…」

ど、どういうこと?

「いくら待っても来ないから、こっちから出向いてやったんだ。

お前を利用させてもらう。
大人しくしていれば危害は加えない」

ひどく冷たい言い方。
その視線だけで心臓を止められてしまいそうだ。
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