君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
「利用って…。

リンタールに帰してください」

「わかってないのか、自分の置かれてる状況が。

お前はさらわれたんだ。
お前の要求など通るはずがないだろ」

だから、意味がわかんない。

「なんでですか…。

なんでこんなことを」

しかし、ナツキ王子は短く息を吐くように笑った。

「早く帰りたいのは、あの王子が心配するからか?

だったら一生帰さない。
苦しめばいい。

はぁ。
もう少しでリンタールはこの手に落ちてくるはずだった。
国民の王宮に対する不満も高まり、治安の悪さも重なって、もはや手をかけずとも自滅する計算だったというのに。

お前が現れてからリンタールが動き始めた。
まったく、厄介な女だ」

この人が、リンタールを…。

「あなたが、リンタールを支配しようとしてたんですか?

国境付近の森林伐採もあなたの仕業ですか」

「森林伐採か。

時が来たら、伐採した所を拠点にして一気に攻めこむ。
そんな算段だった。
だがそれも無駄になった」

一体何を考えているのか全く読めない目で私を見てる。

やだ。

それ以上近づかないで。

そう思うのに、何も言えない。

「きゃ…」

なんで、ベッドに押し倒されてるの…。
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