君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
くっそ。
思い通りにいかないどころじゃない。
俺らしくない。

おい、と兵士を呼ぶ。

「この部屋の前は誰も歩かせるな」

「かしこまりました」

兵士は何の疑問も持たずに手配をする。

これが俺に対する正しい反応だよな。

それを確認して、ようやく中へ入る。

「ナツキ王子…」

明らかに嫌そうな顔を向けられている。
そんなことをするのはこいつしかいない。

「俺がここに来るのは不満か?」

「いえ、不満じゃないです。
私はリンタールを救いたいので、ナツキ王子の話をちゃんと聞く必要があると思ってますし」

「へぇ。
話を聞いたら、止められるとでも思ってるのか?」

「そんなに簡単じゃないことはわかってますけど…。

だけど、知ろうとしないことには何も始まらないと思うんです。

だから、まずは」

大きな瞳がまっすぐに向けられる。

何をする気だ?

その手が頬の赤くなったところへと近づく。

すると、ひやりと冷たいものが触れた。
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