君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
近くの池に架かる橋には、兵士たちがきょろきょろと辺りを窺いながら歩いている。
見回りをしているらしい。

「隠れて」

口を覆われ、強く腕を掴まれる。
気が付いたら部屋の中に引き戻され、壁に押し付けられている。

「他の人に見つかったら騒ぎになる。このまま静かにしててくれ」

真剣な瞳に、吸い込まれそうになる。

…近い。
お互いの服がこすれる音が聞こえるほど、密着している。

「もう少しで通り過ぎる」

こんな距離で囁かれると、耳元がくすぐったい。
静かにしなきゃいけないのに、鼓動がどうしようもなくうるさい。

この状況は一体…。
そしてこの人は…。

まさかとは思いつつ、カナトと名乗る彼の言うことを思い出す。
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