君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
リンタール王国の第一王子。

それが役名でも設定でもないとしたら…。

「よし、もう大丈夫だ」

ないとしたら。

頬をぎゅっとつねってみる。

「どうしよう。
痛い…」

夢じゃないの?
じゃあ、今ここは現実で、本当に、私が知らない世界ってこと!?

「今は混乱してるだろうけど、ゆっくり理解していけばいいよ」

理解?ゆっくり?
それはまずい!
私には時間がないんだ。そんな悠長なこと言ってられない。

「そんなの困る!
明日は大事なコンテストがあるの!
絶対出なきゃ…、じゃないと劇団がなくなっちゃうの!」

訴える声に力がこもる。
自信がなくても、何もやらずに終わるのだけは嫌だ。
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